「無色マナ」とは何なのか?:その目的と開発経緯、デッキ構築におけるマナ基盤の指標を探る

 

昨年の12月、ワールド・マジック・カップ2015の中継映像にて《大いなる歪み、コジレック》そして《荒地》が初めて公式にお披露目となった。

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コジレックのマナ・コスト欄には見慣れぬ菱型の図形、基本土地であるはずの《荒地》には肝心のタイプが不在と、発表当初多くのユーザーが混乱に陥っていたのは記憶に新しい(その様子は当サイトのコメント欄でも振り返ることができる)。

何故「◇マナ」は必要だったのか。無色マナとはなんなのか。無色デッキの土地配分は一体どんなものなのか。1月22日に『ゲートウォッチの誓い』発売を控えた今、この新たな友人(もしくは将来の憎き敵)の情報を今一度整理してみようと思う。彼の正体に迫ることこそが、彼を使いこなす一番の近道のはずだ。

◇マナとは何か

Colorless-symbolまずはこのシンボルが何を示しているのかをおさらいしておこう。

・名称は「無色マナ/Colorless Mana」。略号は(C)。
・無色マナは色を持たないマナである(「好きな色のマナを加える」テキストでは生成できず、「好きなタイプのマナを加える」テキストでは生成可能)。

・コストに書かれたシンボル(C)は、無色マナ1つでのみ支払うことができる。

簡単な話だ。要は今まで無機質故にどのマナでも支払えた無色のカードに、「無色のカードである」という個性が付け加えられたのである。これから先「無色のカード」という言葉の持つニュアンスは「どんな色でも支払える汎用性の高いカード」から「無色という縛りを持ったカード」に変化していくのかもしれない。

太陽の指輪公式データベース「Gatherer」を覗けば既に表記が切り替わっていることに気がつくだろう。

◇は何故必要だったのか

「コストに表記される(1)」は不特定マナ・コストといい、「好きなタイプのマナ1つで支払える」ことを意味する。が、「マナ・プールに加える(1)」は色を持たない「無色マナ」なのである。同じ(1)でも書かれた場所によって意味合いが異なってしまっていたのだ。今回の件は俗語として不特定マナを無色マナと呼び習わしていた一部の古参ユーザーを大いに動揺させたが、間違いなくこれからのマジックユーザーにとっては必要不可欠な変更なのである。

Image▲《精神石》を唱えるのに必要なのは不特定2マナ。しかしタップして生み出す(1)は無色マナ。そしてドローに必要なコストは不特定1マナ。マジックを始めたての頃に混乱した経験を持つプレイヤーは決して少なくないはずだ。

幾度の調整を経て世に出た《荒地》

JP_0z6lq74oCh無色マナ・シンボルを導入するにあたって同時に収録される運びとなった新たな基本土地《荒地》。基本土地タイプを持たない異色の基本土地にして、11種類目の基本土地(6種類目ではない。既に「冠雪の」シリーズが存在する)だ。タップすることで無色1マナが発生するこの土地は、実の所その昔に何度も収録が考えられたことがあったのである。それらを総称して《Barry’s Land》と呼ぶ。Barryとは、マジックにおける初期のテストプレイヤーにして版図など所有地カードのアイデアを作ったBarry Reich氏を指す。

最初の《Barry’s Land》はインベイジョン・ブロックに収録するカードとしてかのMark Rosewater氏によってデザインされた。テキストは以下の通り。

Barry’s Land》
土地

Barry’s Landは基本土地として扱う。
(T):あなたのマナ・プールに(1)を加える。

開発部で一定の評価は得たものの、ルールとして特殊タイプ「基本」が制定されていなかったためドメインの過剰な強化や挙動的問題を起こす危険があり、採用プランが『プレーンシフト』へと見送られ、そのままお蔵入りとなった。

二度目の《Barry’s Land》は『コンフラックス』にて検討される。複数のプランが出され、第一案として「戦場にある限り基本土地タイプとして扱う」を持つ《Barry’s Land》が考えられたが、直感的ではなく見送られた。第二案として登場したのが《Cave》。見た通りの、洞窟のカードだ。

cave

ルール上の問題は解消されたものの、総合ルールに新たな基本土地タイプを書き加えなければいけなくなるほか、《合同勝利》《夢ツグミ》などの性能が著しく変化する危険があったため没となった。そうした懸念を解消すべく第三案として考えだされたのが《Incursion Zone》である。

incursion Zone

《Incursion Zone》は基本土地でないながらも「あなたのコントロールする基本土地タイプの数を数える場合、代わりにそれに1を加えた数として数える。」という能力を持っていた。これによって基本土地の計上をかさ増しすることには成功したが、本来の意図である直感的なデザインから外れてしまい、没となる。ちなみに《聖遺の塔》に使用されたアートは本来《Incursion Zone》に使われる予定のものだったというのは有名な話だ。

三度目の《Barry’s Land》が生まれたのは『ゼンディカー』の開発中である。名称は《City》だがテキストは《Cave》と変わらず、基本土地タイプ「City」を持つ。開発当時は無色マナを用いた「Manabond」と呼ばれる(今思えば無色マナの前身となる)メカニズムが検討されおり、それと同時に《Barry’s Land》の復活も考えられていたが、Manabond自体が没案となったため陽の目を見ることはなかった。

そうして最終的に登場したのが『戦乱のゼンディカー』での収録が決定した、そう《荒地》なのである(基本土地タイプを持っていないので、厳密に言えば《Barry’s Land》の定義からは外れるが)。《荒地》の開発は、デザインやルールと長きに渡り戦い続けた開発部の努力の結晶と言っても過言ではないはずだ。

ペインランドはアンタップイン3色ランド?

既に各所で言われていることだが、無色マナを要求するカードは我々の見慣れた無色のカードなどではない。そのシンボルは実質的な6色目なのである。特に土地のバリエーションが少ないスタンダードではその影響を大きく受けることになるだろう。

jp_YLH38t7W9r▲発売前からかなり優秀な無色カードとして話題を呼んでいるインスタント《歪める嘆き》。あなたのデッキにこれを入れる場合に必要な無色土地はさて、いくつ?

仮に上の《歪める嘆き》をデッキに投入する場合、当然2ターン目には使用できるようにしたい。公式記事(金子と塚本の「勝てる!マジック」 第10回:マナバランス その1)の表によれば60枚デッキの先手2ターン目に約80%の確率で無色土地を引き込むには11枚の投入が必要で、これは決して軽い気持ちでタッチできるような枚数ではない。しかし幸い、今の環境にはそれを克服しうるカードが存在する。そう、ペイン(ダメージ)ランドだ。

Image (1)Image (2)

例えば今回再録となった強力なダブルシンボルの除去呪文《闇の掌握》と《歪める嘆き》を黒単のアグロデッキで併用したい場合、(土地以外のマナ生成手段を使用しないデッキでの)2ターン目の安定運用のためには上記の無色マナの枚数を踏まえつつ18枚前後の黒マナを生む土地が必要となる。そこで活躍するのが《コイロスの洞窟》と《ラノワールの荒原》の2枚だ。これらを計5枚投入することで無色マナ土地5枚と黒マナ土地5枚を同時に確保でき、24枚の土地を使用する場合それらに加え《沼》13枚と《荒地》6枚で80%マナベースは大雑把ながら完成となる。もちろん事故軽減のためにペインランドをもう何枚か追加してもいいし、《荒地》を参照しないデッキであればその枠を《海門の残骸》などの優秀な無色土地に変えてもいいだろう。欠色呪文が多ければ《廃集落》もマナベースの安定に大いに役立つ。

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▲ランプデッキでの採用が大いに期待される帰って来た《不屈の自然》こと《残された廃墟》。このカードをタップイン前提で運用する場合、その土地配分は更にシビアなものとなる。

このようにスタンダードにおけるペインランドの存在は大きく、1色でも色の合うものをとにかく投入することで無色カードを強引に運用することは不可能ではない。しかしその場合現環境において主流であるフェッチランドやバトルランドの恩恵はほとんど受けられなくなる上、色マナを出した時のダメージも凄まじいものとなる。マナベースがより複雑化するこれからのスタンダードでは、環境に合わせてデッキ全体のバランスを見極めることがより重要となるだろう。

《荒地》がなくとも無色は使えるリミテッド

他の基本土地と違い、自分のプールにあるものしか使用できない《荒地》。2種類が存在するため通常のコモンカードより出現率は高いが、運の要素が絡むリミテッドではお目にかかれないことももちろんある。『戦乱のゼンディカー』2パックと『ゲートウォッチの誓い』4パックを使用するシールド戦においては、恐らくあなたは1~3枚の《荒地》を手に入れることになる(もちろん0枚の場合も4枚の場合もある)。無色のカードを基本戦術に組み込む場合、マナを《荒地》だけで補うのは到底不可能だ。そこで頼ることになるのが無色マナを発生させられるカード達である。

jp_voyMKFxaoU▲タップすると無色専用マナが出る上に、3マナ2/3とサイズも頼もしい。jp_z4brTBCUEJ▲本セットにおいても末裔トークンを生成するカード達を収録。jp_NX3szxydVl▲クリーチャーを経由してではあるが、色マナも出る無色土地。

公式記事(『ゲートウォッチの誓い』 プレリリース入門)によると、「少量の無色マナ・シンボルを持つカードを採用する」場合には「無色マナを生み出せる手段が3~5枚必要」ということらしいので、無色マナ生成手段の有無も色を決める上での重要な判断基準となる。さらにドラフトにおいては自分のピックしたカードが全てである。強力な無色のカードを手に入れた場合、あるいは無色デッキを構築する前提で動く場合はこういった枚数にも気を配りたい。

関連リンク

『ゲートウォッチの誓い』 メカニズム – 米MTG公式サイト
『ゲートウォッチの誓い』 プレリリース入門 – 米MTG公式サイト
『ゲートウォッチの誓い』カードイメージギャラリー – 米MTG公式サイト

58 コメント on 「無色マナ」とは何なのか?:その目的と開発経緯、デッキ構築におけるマナ基盤の指標を探る

  1. [51] オフゾフのケツ男爵 2016/01/16(土) 10:42:59 ID:A2OTA1OTM

    いよいよプレリやで
    いいウギンこい

  2. [52] 名無しのイゼット団員 2016/01/16(土) 16:24:53 ID:k4MjM1MDc

    プレリ参加→無色はある意味有色(戒め)

  3. [53] 名無しのイゼット団員 2016/01/16(土) 22:39:23 ID:g2Njc4Mjc

    ドラフト用のカードあるんだからネタ切れも糞もないよ。

  4. [54] 名無しのイゼット団員 2016/01/16(土) 23:48:59 ID:k0MjU0MTU

    無色(一つのカラーバイ)
    なんでも出来るけど重いのが無色の面白さだったけど、エルドラージの基本色となってからは何がしたいのか分からん変なの、ありそうで無かったもの、珍味過ぎて人類が理解するには時間がかかるが、使い方が分かるととんでもない事をしでかすものとかが出てきそう。

  5. [55] 名無しのイゼット団員 2016/01/17(日) 18:53:53 ID:QxNjkwMjE

    カードの裏面壊れる

  6. [56] 名無しのイゼット団員 2016/01/17(日) 21:23:04 ID:I0OTUzMTM

    これを読んでもまだ無色を色の1つだと考えている人は、初心者にルールを教えて欲しくないかな。
    無色は色が無いから無色なんだよ?(当然)
    あと、表記が変更されただけでルールは何1つ変更されて無いよ?(当然)
    無色の扱いがわからない人はも一度ルールを覚え直してね。(当然)

    良記事gb!

  7. [57] 名無しのイゼット団員 2016/01/18(月) 00:51:48 ID:Y4NTQ0MDY

    有色カードと同じような拘束、同じようなパワーを持ってるから無色カードを入れるなら一色足すようなマナ基盤にしないといけないって意味でみんな実質一色とか実質有色とか言ってるんだよ?(当然)

  8. [58] 名無しのイゼット団員 2016/01/18(月) 11:45:00 ID:gyODgwNzc

    無色マナを供給するランドの価値が相対的に向上したことから、ドラフトにおける価値観にも変化が生まれて、非常に面白い。

    リミテッド勢としては、楽しい変革だと思う。

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