Magic Story『贄』:ザヴァ湖に潜む怪物「ギトラグ」に怯える村人とその存在がもたらす狂気

 

日本時間の3月24日、米マジック:ザ・ギャザリング公式サイトより背景世界記事であるMagic Story『贄』が公開されました。

ネファリアの高地に位置するザヴァ湖には怪物がいる――そんな言い伝えが残る村の、そんな言い伝えを信じない14歳の娘ミア。聡明な彼女はまだ知らないのです。水底に潜む、本物の、本当の恐怖を。

あらすじ

怪異退治をしながら世界を旅する処刑者の集団「スキルトの民」の父を持つ村娘のミア。現実主義の彼女は村に伝わる怪物「ギトラグ」の言い伝えを――霊魂や狼男、吸血鬼が実在するという事実を踏まえても――曖昧な噂話として信じていなかった。ミアと親友以上の仲である長老の息子ウィルバーは頑なにその存在を主張するが、彼女は行き過ぎた想像からくる妄想だと軽口をたたく。それでも、彼女は臆病だが自分の身を案じてくれるウィルバーのことを悪く思っていなかった。

ある朝ミアが目覚めると小屋の一部が壊れ、一匹の羊が逃げ出していた。この時はよくあることだと気にも留めなかった。市場へ繰り出したミアは有名なホラ吹きのヴェリルと長老カリムに出会い、ギトラグについて警告を受ける。カリムは演説を始め、湖での漁の禁止と、アヴァシン教会へ助力を乞う手紙を出したことを村人に伝えた。君も父親に手紙を、とカリムがミアを見つめる。彼の瞳の奥深くには恐怖を感じる何かがあった。沈黙する群衆、とその時、突如現れたウィルバーが慌てて父親へとかけていき、思い切り大の字につまづいた。場の緊張が解れ、広がる解散の空気。間の抜けた顔から一転、真剣な面持ちで「大丈夫か」と口を動かすウィルバー。ミアは彼の機転と優しさに感謝しつつも、心の中には複雑な感情が渦巻いていた。

ウィルバーとの会話の中で、疑いを持ちつつも脅威に備えることを決めたミア。しかし教会からの救援はいつまで経っても来ず、次第に村への隊商も完全に途絶えた。彼女も折れてしばらく連絡していなかった父親に手紙を書いたが、返事は来ない。その後、郵便配達員も来なくなった。更にある日、彼女の飼っている羊が再び姿を消した。今度は三頭。冬が深まると、村人は武装して見回りを始めたようだった。ギトラグ相手にそんな武器なんて意味があるのだろうか。

ある日、それは唐突に起こった。何かが砕け、裂ける音が小屋の外で響いた。跳ね起きたミアはそこで羊が一匹残らず殺され、血と臓物が地面を覆っているのを見つける。気力を振り絞り周囲を見渡すと、血だまりの中に幾つかの大きな足跡があった――ギトラグ。その足跡は森を目指していた。ミアは恐怖しつつも将来父親と同じ処刑者になる夢を叶えるべく、その第一歩としてかの怪物を追跡することにしたのだった。倒すことはできずとも、観察し情報を伝えることはできるだろう、と。

森に入るとあれだけ大きかったギトラグの足跡が直ぐに姿を消した。おかしい。付近を探索するとそこには人間の足跡。抵抗の様子もなく、ギトラグに捉えられた訳ではなさそうだった。ミアの中で恐怖が怒りに変わる。もし誰かが羊を殺し、あまつさえ自分を欺こうと言うのなら、報いを受けさせる。さらに足跡を追うと噂の湖へと出た。湖には漁師であるレーレンの大きな船が浮かんでおり、フードを被った大勢が羊の死骸をそれに運び込んでいるのが見えた。その内の一人は、ウィルバーだった。混乱しつつも動き出す船の梯子へと隠れるようにしがみつくミア。しばらくすると船が止まった。乗員の一人がフードをおろす。今度はカリムだった。「平和を願い、無信仰者の羊をギトラグに捧げよう」死骸が湖に投げ入れられようとすると、ミアは耐え切れずに姿を見せ、叫ぶようにして説明を求めた。「ギトラグを称えるのだ!」こだまする群衆の声。「信じさせたいならギトラグとやらを見せてみなさいよ!」彼女がそう言うと、湖に羊が投げ込まれた。一瞬の静寂、そしてその後に水面が弾けた――ギトラグは、そこにいた。ただの大きなカエルじゃない、と嘲るミア。突如フードを外したヴェリルが肩を揺さぶる。羊で足りなければ、俺たちは皆――直後、ヴェリルは悲鳴を上げて宙へ舞い上がり水中へと姿を消した。絡みついていたのは、ギトラグの舌だった。もう羊では足りない、殺してあの娘を食わせるのよ――そう言ったのは誕生日に焼き菓子をくれたはずの鍛冶職人の妻サラだった。ナイフを抜き、ミアへと迫るサラ。その瞬間、ギトラグの舌がまたも伸び、サラと幾人かの村人を水中へと引きずり込んだ。靴職人が、花屋の娘が、次々にミアへと襲いかかる。とその時、突如現れたウィルバーが棍棒で村人を気絶させた。どうやら彼だけはまともなようだった。ウィルバーと共に逃げようとするミア。しかしそこにカリムが立ちはだかる。こんなの狂ってる――ウィルバーの懇願もカリムには届かない。「偉大なるギトラグよ!この娘を捧げましょう!」ミアに向かいナイフを振るうカリム。だが間一髪のことで再びギトラグの舌が伸び、カリムの頭を直撃した。なりふり構わず水に飛び込み泳ぐ二人。二人はやっとの思いで岸へと辿り着いた。寒さと恐怖に身を震わせるミア。しかしその背後からびたん、びたん、とギトラグの湿った足音が聞こえてくる。逃げなければならないが、足が動かない。ミアが初めてギトラグの底なしの瞳を見つめた時――彼女は「落ちた」。低い唸り声、転がり落ち鼓膜が破れる錯覚と狂乱、そして奇妙な温もりと安堵……。未だに逃げようと自分の手を引くウィルバーの頬に手を伸ばし、微笑みながら砂のついた髪を撫で――ダガーを彼の胸骨へと差し込んだ。「ギトラグのために」怪物に頭を垂れつつ、ミアは言う「全ては贄」。ウィルバーだったものの体が大きな口へと飲み込まれた。

雪が溶け春が来ると、郵便配達見習いの少年がザヴァ湖付近の小さな村へとやってきた。降雪によって手紙の配達は滞っており、多くの家を訪れることになったが、そのほとんどが無人だった。最後の手紙の宛先は丘の上の家屋。近くには壊れた羊小屋があった。また無人かと心配したが、煙突からは小さな煙が上がっている。扉を叩くと奥から野性的な瞳の女性が現れた。スキルトの民からの手紙だというのに、彼女は興味がないようだった。しかし彼が湖の話題を出すと女性は目を輝かせ、食事と休む場所の提供、それに湖への案内を申し出た。少年は頬を赤らめつつ礼を言う。その様子に彼女は――ミアは微笑むのだった。

関連リンク

『イニストラードを覆う影』物語アーカイブ – MTG米公式サイト
次元概略:イニストラード – MTG米公式サイト

ソース

贄 – 米MTG公式サイト

51 コメント on Magic Story『贄』:ザヴァ湖に潜む怪物「ギトラグ」に怯える村人とその存在がもたらす狂気

  1. [51] 名無しのイゼット団員 2016/03/25(金) 17:54:31 ID:k0MjMwODY

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